令和6年度事業方針

1.農業・農政及び組織をめぐる情勢と課題

 我が国の農業・農村は、人口減少に伴う国内市場の縮小や生産者の減少・高齢化等の課題に直面しているほか、世界的な食料の増加や国際情勢の不安定化等に伴う食料安全保障上のリスクの高まりにより、食料を安定的に供給していくための大きな転換期を迎えている。

日本の食料自給率(カロリーベース)は、令和4年度は38%と前年度と同じであったが、生産額ベースでは58%と前年度から5ポイント低下している。また、基幹的農業従事者数は減少傾向で推移しており、令和4年は123万人、うち65歳以上が86万人、平均年齢は68.4歳と高齢化が顕著であり、地域農業の担い手不足が懸念されている。一方で農地面積については、433万㏊と昭和36年のピーク時から約3割減少するなど、日本の農業を取り巻く状況が大きく変化している。

このような情勢の中、食料・農業・農村基本法の検証・見直し作業が食料・農業・農村審議会の基本法検証部会において議論が重ねられ、令和5年9月11日に野村農林水産大臣に答申された。基本法改正案は今通常国会に提出され、国内における食料の供給量が大幅に不足するリスクに対応するための食料供給困難事態対策法案とともに、食料安全保障の基盤となる農地・人に関わる農業振興地域整備法・農地法・農業経営基盤強化促進法の農地関連法制の改正法案が提出されており、それを具現化するための基本計画の見直しに対しては適切な対応を図っていきたい。

昨年4月には農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律が施行され、「人・農地プラン」が「地域計画」として法定化、基盤法の農用地利用集積計画をバンク法における農用地利用集積等促進計画への統合、農業委員会の地域計画における目標地図の素案策定により地域の農地に対する機能と役割の強化等が実施された。

現在、市町においては農地利用の将来像を描く「地域計画」の策定作業が進められており、農地の出し手・受け手の意向調査を踏まえた地域での話し合いがほぼ全ての市町で開かれている。

また、農業人材に占める外国人の位置付けが高まる中、外国人が日本で技術を学ぶ技能実習と外国人労働者の受け入れ拡大のために導入した特定技能の両制度の見直しが検討された。

現行制度に代わる新制度(育成就労制度)の定着に向け、全国農業会議所と連携しながら普及推進に努める。

農業委員会系統組織は、農業・農地の持続的な発展・維持を図るため、農業委員と農地利用最適化推進委員の資質向上及び現場での一層の連携の取り組みを支援するとともに、農業委員会には農業者や農村地域の声を農政にしっかり反映させることが求められていることから、今後とも農業者のみならず関係機関・団体の期待に応えるため、農業会議の事務局体制の強化を図り、以下の事業に取り組むこととする。

2.事業推進の重点方針

1)新・農業委員会制度の下での組織・活動体制の整備強化

市町農業委員会の活動実態の把握・情報の共有化、組織の課題・問題点を把握して必要な対応に努める。また、農業委員会活動への的確な助言や相談活動の円滑な推進を図るため、農地制度の仕組みや農地利用の最適化を推進する活動などの情報提供、農業委員・農地利用最適化推進委員及び市町農業委員会職員等を対象とした研修会の開催、市町農業委員会が主催する研修会等を支援する。さらに、農業委員・農地利用最適化推進委員一人一人の活動強化を重点に事業推進を図る。

2)農地利用の最適化に向けた取り組みの推進

「地域計画」素案づくりの期限が令和7年3月末となっていることから、引き続き農業委員会における農地の利用状況調査(農地パトロール)、農地所有者等への利用意向調査の計画的な実施を支援する。また、地域計画の策定に向けた話し合いがほとんどの市町で行われていることから、「目標地図」素案の作成や「目標地図」の実現に向けた取り組みを支援するとともに、令和6年度中の策定を目指してその中核の業務を担う農業委員会へのサポートを強力に推進するする。

3)農業者・地域の声をくみ上げた政策提案活動の推進

農業委員会ネットワーク業務の実施を通じて得られた知見に基づき、農業委員会が農地等の利用の最適化の推進に関する事務をより効率的かつ効果的に実施するため、関係行政機関等に対し、農地等利用最適化推進施策の改善について意見を提出する。また、農業会議構成団体組織である農業経営者組織、農業法人、認定農業者等の生の声や要望をくみ上げ、農業・農業者の代表機関として、農政活動を推進する。

4)農業経営の確立と新規就農・人材育成等の支援強化

農業簿記記帳や青色申告の啓発・普及、農業経営の法人化等の推進、家族経営協定の啓発・普及、農業者年金の加入促進を農業経営者組織の自主的な組織活動と連携しながら継続し、担い手の確保・育成及び経営確立に向けた支援を強化する。また、新規就農・人材育成については引き続き「新規就農相談事業」や、「雇用就農資金事業」等を通して、農業への就業の定着と将来の担い手として自立できるよう支援する。

5)農業・農業者等に関する情報提供活動の強化

農地利用最適化推進の横展開、農業施策の普及・浸透等を図るため、全国農業新聞・全国農業図書の普及・活用を推進するとともに、農業委員会だよりや市町広報誌・ホームページを通して、農業者のみならず幅広く情報の提供に努める。